昨日の日本対南アフリカ戦。大歓声の中戦い抜いたJAPAN XVには負けた悔しさより、やり抜いたという充足感が全身から感じられ、応援していた日本人全員が清々しい気持ちになったことでしょう。他のスポーツとラグビーの違いは、勝負の結果だけではなく、すべて出し切って戦ったかということも大事であり、たとえ負けたとしてもそのことがあればオッケー、「これでノーサイド」という気持ちになれるということかもしれません。もちろんスポーツである以上試合に勝つということは極めて重要です。どんな形であれ勝利という結果は出さなくてはなりません。しかし、ノーサイドというのはそのこととは別の次元のことです。うーん・・・うまく表現できないなあ・・・こんなことをいうとまたえらそーにって思われるかもしれませんが、かつてのチームメイト某がしょっちゅう口にする「ラグビーやったことの無い奴にラグビーはわかんないよ」的な・・・いやいや、決してそうではなく、単に筆力がなく伝えられないだけのことです。
ということで観戦記。JAPANはイングランド戦、アイルランド戦に見せた勇気あるディフェンスと短いパスをつないで相手の防御陣を切り崩すオフェンスという戦法を踏襲した様です。この戦法に間違いはありません。事実、前半のポゼッションはJAPANが圧倒的でした。では予選とは何が違うのか?それは、南アフリカ(SA)の研究に研究を重ねた組織ディフェンスでした。短くつなぐパスに対し早いタックルで防御し、さらにイーブンボールへの働きかけもSAのFWはかなり早くその後の集散にも意識が高かったようです
前半途中、シンビンでSA のFWが1人欠ける展開になりました。この前あたりからSAのパスのキャッチミスやこぼすなどの細かいミスが多く見受けられていました。SAにとってはかなり厳しくタフな状況です。この間にJAPANとしてはトライを取っておきたいところでした。そうすればかなり勢いに乗れたことでしょう。それでもスクラムからPKを取って得点に結びつけることはできました。もし無得点ならば、シンビン解禁後、SAは地力を取り戻し、SAらしい展開ラグビーとキックを多用した攻撃を繰り出すきっかけになったところです。この3点を取ったことでJAPANにイケるという確信が芽生え、SAはディフェンスにより一層傾注せざるを得なかった。前半を手堅くまとめ後半につなげるラグビーtという選択を余儀なくされたといえます。特に前半の30分以降、積極的にPHASEを重ねていくSAは今一歩地域を稼げないとみるやSHデクラークのキックで裏に蹴り出さざる負えないプレーが象徴しています。
ところで、私は本マッチ以前からSAのSHデクラークのプレーにくぎ付けでした。今回もデクラークの素晴らしいプレー、特に献身的なタックルや正確なパス、ましてや強力FWを御して相手FWを粉砕する高い指導力に唸りっぱなしでした。JAPANの戦いぶりと同時にデクラークの動きにも意識を傾けていました。
後半。JAPANは前半の戦いぶりを継続することを確認したのでしょう。闘志は前半と遜色はありません。しかし、スクラムは歴戦で痛んでいた第一列には厳しくボディブローのように効いてきたのか他の試合に見られたような安定感が薄れてきました。また、繋ぐプレーもデクラークや第三列の激しいタックルにその行く手を遮られる展開に。SAは、ミスが目立った前半に対し、後半はその部分が修正されてました。WTBは突破力を生かし確実にゲインしていきます。JAPANは何とか止めることはできましたがそこから反撃に出ることは叶いません。逆にPKを取られてしまいます。この場面でのPKは規律の問題ではないと思います。相手の攻撃が波に乗って防戦が続く状況ならば、オフサイドやノットロールアウェイ的なペナルティは致し方ないとも言えます。これが正に実力の差です。この場面でPKを確実にきめたことが大きい。点差がある程度開いたところでSAは従来の戦術を手堅く展開することに。特にデクラークのゲームプランを確実に実行していく能力に脱帽です。FWのドライブから抜け出たFWからのパスを受け、福岡への強烈なハンドオフ。ひときわ小柄の名手、日本人選手が手本とすべきでしょう。
その後、SAがラインアウトモールラックを支配し、効果的なキックをちりばめながら納得のトライを重ね、JAPANをノートライに粉砕したわけですが、JAPANの攻撃と防御に著しく落ち度があったとは思いません。戦いぶりは立派といえるでしょう。むしろTIA1たるSAがあらゆる面で優れていたということです。流はトイメンのデクラークには歯が立たなかったし、松島においてもやはりSAのWTBの強さと比較するとまだ粗い印象はぬぐえません。プレーしている選手が一番分かっていることです。良い意味で爽快な敗戦です。それがノーサイド後のJAPANのメンバーの振舞いに現れていました。気持ちが洗われました。
これでワールドカップが終わったわけではありません。歴代の戦いでドラマが生まれるのは準決勝、決勝なのですよ。私は決勝にSAが勝ち上がって、鉄壁なALLBLACKSとどのような戦いを繰り広げるか楽しみでしょうがありません。もちろん、準決勝、INGLANDVSALLBLACKS、WALESVSSAも見逃せませんけど
Player of the Matchに選ばれたデクラーク。文句なしですね。
日本の報道ではこの優れたプレーヤー関してほとんど触れていないけど、
外国のメディアではデクラークの活躍が大きく取り上げていたようです。
もう少し勉強しよう。JAPANMEDIA!
(文中敬称略)